【LBJ2021】3D/4DデータやID標準化など、進化する位置情報技術を活用して社会にイノベーションを。Georepublic Japan関氏の基調講演「位置情報の発展と社会の変化について」レポート

位置情報を活用したビジネスをテーマにしたイベント「ロケーションビジネスジャパン(LBJ) 2021」が4月14日~16日の3日間、幕張メッセおよびオンラインにて開催されました。

昨年はコロナ禍によって開催中止となったため、2年ぶりの開催となった同イベントの今回のテーマは、「ニューノーマルで活きる位置情報ビジネス」。ニューノーマル社会の基盤としての位置・空間情報の利活用について議論する場として、多彩な講演と会場での展示が行われました。

この中から、最終日の16日に行われた、関治之氏(Georepublic Japan代表社員/CEO・内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 政府CIO補佐官)による基調講演「位置情報の発展と社会の変化について」をレポートします。

Georepublic Japan代表社員/CEO・内閣官房 情報通信技術(IT)の総合戦略室 政府CIO補佐官関治之氏

さまざまなビジネスに溶け込むロケーションテック

関氏は上記に挙げた2つの肩書きに加えて、東京都のチーフデジタルサービスオフィサーや神戸市のチーフイノベーションオフィサー、浜松市フェローなど数多くの自治体のアドバイザーを務めるとともに、市民によるテクノロジーを活用した地域課題解決に取り組む各地のシビックテックコミュニティを支援する組織「Code for Japan」の代表理事も務めています。

さまざまな活動に取り組んでいる関氏ですが、その思いは「オープンコミュニティでより良い社会を作る」という目的で一貫しており、オープンソースソフトウェア(OSS)やオープンデータといった技術を活用し、コミュニティ同士をどのようにつなげて課題を解決するか、ということをテーマとして活動しています。

関氏は、ロケーションテック(位置情報技術)は地図データやルート情報、ルートの最適化、住所の台帳、都市計画、3Dの点群データ、ビデオイメージなど多様な技術の集合であり、最近は色々なビジネスに溶け込んできていると前置きした上で、ロケーションテックのこれまでの発展として、「地図のデジタル化とインターネット」、「空間情報の精緻化、標準化によるサービス向上」、「モバイル端末とセンサーによるデジタル社会の到来」、「3次元方向への進化」の4つを挙げました。

今後の技術進化としては、3Dデータや、時系列の要素を加えた4Dデータの活用を挙げました。自動運転など、コンピュータが地図を使う時代になってきており、機械が使う地図には、人が使う地図とは異なった作り方や内容が求められています。ツールについても、ゲームエンジンの「Unity」などがGISのツールとしても使われるようになってきています。

最近では、国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」がスタートし、エリアによってはLOD(Level of Detail:詳細度)の高いデータが提供開始され、リアルな都市データを誰でも使える時代になりつつあります。また、静岡県でも、施設や道路の点群データを提供する「Shizuoka Point Cloud Databese」を公開しており、このような精細なデータをどうやってビジネスに活用していくかという議論がこれから活発になってくるものと思われます。

IDの標準化とデータ連携の重要性

このほかに重要な点として、「IDの標準化とデータ連携」も挙げました。IDは位置情報と地図やセンサーデータ、顧客データなどさまざまなデータをつなげるものであり、そのIDを共通化することはとても重要で、以前からデータ同士を連携させるための「Linked Open Data」という技術が追求されていました。

一方、最近ではGeoloniaと不動産テック協会が「不動産共通ID」を作る取り組みを開始しています。不動産を管理するための共通のIDが整備されることで、POI(Point of Interest:地図上の特定の地点)がより色々なものと連携していくことが可能となります。

また、日本政府が重要戦略として急ピッチで進めていることとして、ベースレジストリ(社会の基本となるデータセット)の整備も挙げられます。法人や土地、建物、資格など社会の資本やサービスについては、これまでは自治体ごとに色々な台帳を管理していて、それらをつなげることはできませんでしたが、IDをできるだけ色々なものに付与して、データを標準化することにより、どこの自治体のどのようなデータでも同じフォーマットで取得できるようにするための取り組みが始まっています。

社会実装を意識したサービス作りによってSociety 5.0を実現

このような状況の中、新たにサービスを作る上で気を付けるべき点として、関氏はまず「社会実装を意識したサービス開発」を挙げました。マーク・アンドリーセン氏が2011年に述べた「Software is eating the world」という言葉が示す通り、今や世の中のサービスはソフトウェアなしには成り立たなくなっています。

一方、ジオロケーションデータ(位置情報データ)についても同じことが言えます。もはや位置情報データが無くなってしまった世の中というのは想像できないくらいに位置情報データは重要なものとなっており、それを活用したビジネスを作る上でも、社会の色々な場面の中で実装されていくことを意識する必要があります。

Society 5.0で掲げている次世代の社会とは、人間中心の考え方が根底にあり、テクノロジーは人々のために使われ、イノベーションは人々の生活を豊かにするために活用されます。経済発展だけでなく社会的課題の解決を目指すためにはサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることが必要であり、これを実現するためにはロケーションテックが有効となります。

関氏はこのような社会を実現するための課題として、「変化の早い技術のキャッチアップ」、「労働やサービスのデジタル化」、「サービス開発における競争分野と共調分野の線引き」、「長期的な利益と短期的な利益のバランス取り」、「市民の理解や参加の促進」の5点を挙げた上で、Society 5.0はあくまでも住民の福祉を守るための手段であり、それを目的化するべきではないことを強調しました。

企業・政府・市民が連携することでガバナンスにイノベーションを

その上で、これからロケーションテックを使って地域のサービスや社会インフラを作るときに、規制の撤廃などガバナンスを変える場合は、ソフトウェア中心で動的かつリアルタイム、そして人が判断・関与するのではなく可能な限りアルゴリズムが判断するサービスを追求するべきであり、国際的な展開も意識する必要があると語りました。そのためには先にルールを決めるのではなく、目指す姿を決めて動きながら軌道修正していく姿勢が必要で、従来と同じやり方に固執するのはリスクであり、経験が却って足かせになる可能性があることを意識しつつ、多様性を尊重しながら、さまざまな人材とともに考えることが企業に求められています。

そしてガバナンスにイノベーションを起こす場合は、企業と政府、そしてコミュニティや個人が相互に連携しながらサービス開発を進めていく必要があります。関氏は今後の企業のあり方として、「利益だけではなく共通善も追求」、「囲い込みではなくオープンイノベーション」、「中央集権ではなく自律分散」、「組織の成長だけでなくそこで働く人みんなの成長」、「急成長ではなく持続可能性の追求」の5点を挙げました。

たとえばGeorepublic Japanが提供する市民と行政のコミュニケーションツール「MY CITY REPORT」は、自治体の要望を聞いてそのまま実装するようなことはしていません。市民が街の課題を発見して、その情報をスマートフォンから位置情報と写真付きで自治体へ送ると、自治体側もその情報をタスクマネジメントツールとして使えるので、従来よりも効率的に作業できます。このようなエコシステムを作ることにより、“市民と行政がコラボレーションしながら一緒に街を良くしていく”というビジョンを持って自治体とともに推進しています。

ロケーションテックの民主化がもたらしたシビックテック活動

関氏はもうひとつ注目するべき点として、「ロケーションテックの民主化による課題解決」を挙げました。一昔前だと何百万円ものコストがかかったツールやシステムが無料で使える時代になっており、今や誰でもロケーションテックを使える時代となっています。このような技術を使って社会課題解決に取り組む全国のシビックテックのコミュニティを支援しているのが、関氏が代表理事を務めるCode for Japan(CfJ)です。

CfJは2020年春に「東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」を開発し、GitHubでオープンソースとして公開しました。これに対して世界中から貢献があり、3週間の間に224名のエンジニアが改善に協力し、750件の提案のうち671件が採り入れられました。

このように、オープンソースへの投資は、社会的な知的資本の蓄積につながり、行政が作ったものは公共財として公開して、他地域でも使えるようにすることで全体が良くなることにつながります。その例として関氏は、札幌市の保育園を地図上で見られるようにした「札幌保育園マップ」や、災害時に紙で必要な情報を配布することに特化したサービス「紙マップ」、ノーコードで作れるテイクアウトマップなどを紹介しました。

関氏は最後に、「われわれ技術者や企業経営者がサービスを作るのは、世の中に良いものを残していくのが使命だからです。子どもの世代により良い未来を残すためには、地域の中で新しいガバナンスを作り、どうやって技術を社会実装していくかを真剣に考えることが必要だと思っています」と語りました。

URL

ロケーションビジネスジャパン2021
https://www.f2ff.jp/lbj/

Georepublic Japan
https://georepublic.info/ja/

Code for Japan
https://www.code4japan.org/