【ジオ用語解説】ジオコーディング
地図アプリで住所や地名、施設名、駅名などで検索すると、該当する施設や場所が地図上に表示されます。
このように住所などの文字列によって地図上の特定の位置を示すためには、住所をもとに緯度・経度などの地理座標に変換する「ジオコーディング(アドレスマッチング)」という処理が必要となります。
たとえば東京駅の住所を示す「東京都中央区丸の内1丁目」にジオコーディングを行うと、「緯度35.68156、経度139.767201」に変換されます。この座標をGoogleマップの検索窓に「35.68156,139.767201」と入力して検索すると東京駅の代表点が地図上に示されます。
住所だけでなく、地名や施設名、郵便番号などが示す場所に座標を付与することもジオコーディングと呼ばれています。また、反対に緯度・経度などの座標から住所や地名などの情報に変換することは「逆ジオコーディング(リバースジオコーディング)」といいます。
数字では覚えにくい緯度・経度を住所や施設名でわかりやすく
私たちが地図上で何らかの施設や場所の位置をほかの人と共有しようとした場合、緯度・経度を使うのは数字の羅列となるため覚えにくく、伝達ミスも発生しやすいため不便です。
住所や施設名と緯度・経度などの座標を紐付けることによって、他人と位置情報を共有したり、スマホの地図アプリで気軽に住所・施設名検索を行ったりすることが可能となり、地図サービスの使い勝手を高めることができます。
たとえば顧客管理システムなどにおいて、大量の顧客の住所をもとにジオコーディングを行い、地図上に可視化すれば、地図上で顧客の居住地の傾向を分析することができます。また、顧客先を効率的に訪問するためのルートを地図上で検討することも容易になります。
なお、ジオコーディングで示されるのは代表点が1点のみの場合もあれば、市区町村単位など、特定の領域が面で示される場合もあります。また、ジオコーディングは現代の住所や地名だけでなく、明治期の住所をもとに地理座標を取得できる「近代東京ジオコーディングシステム」といったサービスもあります。
住所ごと異なる表記を揃えるためのデータベースが重要
ジオコーディングを行うためには、住所や施設名などと緯度・経度を対応させたデータベースが必要です。日本の住所は「3丁目」「三丁目」と数字や漢字で表記が異なることもあれば、京都の住所など特殊な表記もあるため、標準化が難しく、データベースによってマッチングの精度も異なります。また、市町村合併などが行われればデータベースの更新も必要となります。
ジオコーディングのデータベースは、街区レベルや大字・町丁目レベル、号レベルなど、さまざまな精度のものがあります。データベースを選ぶ際には、用途によってどのレベルまで必要なのかを踏まえて検討する必要があります。ジオコーディング・データベースの例としては、国土交通省の「位置参照情報ダウンロードサービス」が挙げられます。ちなみにGeoloniaも2020年8月に、「Geolonia 住所データ」という住所マスターデータをオープンデータとして公開しました。
ジオコーディングの処理を行うソフトウェアやウェブサービスは「ジオコーダー」と呼ばれています。代表的なものとしては、東京大学空間情報科学研究センターの「CSV アドレスマッチングサービス」やGoogle Maps API、Yahoo! Maps APIなどがあります。なお、GeoloniaもオープンソースのジオコーディングAPI「Community Geocoder」を2020年6月に公開しています。
ジオコーダーの仕組みは、住所から地理座標に変換する場合、住所データを都道府県や市区町村など行政区分に応じてレベルごとに分解した上で、データベースを照合して座標を導き出します。この際に住所の末尾まで照合できない場合は、照合可能なレベルまでの座標が示されます。たとえば「東京都文京区本郷1-2」という住所を入力した場合、末尾の2番に該当する住所がデータベース上に見つからない場合は、その上のレベルの1丁目を代表する座標を出力します。
地図アプリやウェブの地図サイトにおいて、多くの人はジオコーディングを意識せずに使用していることと思いますが、デジタル地図では当たり前となった住所検索や地名検索を実現するためには、けっして欠かせない大切な技術なのです。
■URL
Geolonia 住所データ
https://geolonia.github.io/japanese-addresses/
Community Geocoder
https://community-geocoder.geolonia.com/
位置参照情報ダウンロードサービス
https://nlftp.mlit.go.jp/isj/
近代東京ジオコーディングシステム
http://www.bokutachi.org/geocoding/