日本の住所は“うまく整備されているほう”!? 大事なのは「地域の多様性」

Geolonia代表の宮内が語る「日本の住所」問題(その1)

Twitterを中心としてSNSで話題になった「日本の住所」問題。河野大臣の発言をきっかけにしたこの問題は住所に関する識者を中心にさまざまな事例や議論がSNS上で交わされ、グラフィアを運営するGeolonia代表の宮内による、住所の正規化の難しさについて書いたブログも改めて話題になりました。

日本の住所の正規化に本気で取り組んでみたら大変すぎて鼻血が出た。 – Qiita https://qiita.com/miya0001/items/598070abcdf0799daebc

今回はこのブログを書いた代表の宮内に、ブログから3年経って改めて考える「日本の住所」問題について話を聞きました。

Geolonia代表の宮内

第1回:日本の住所は“うまく整備されているほう”!? 大事なのは「地域の多様性」
第2回:“鼻血が出た”あの日から早3年、大きく進歩した「日本の住所の正規化」
第3回:生成AIは「住所の正規化」の救世主になりうるか

住所の難しさは日本だけの問題ではない

3年前、日本の住所の正規化に取り組んだら鼻血が出てしまったという話を書きました。この記事はこれまで何回かバズっていまして、このたび河野大臣の住所に関する発言でもやはりバズったのですが、今回の反響は今までで一番大きかったように思います。

ただし、ちょっと誤解されている方が多いかもしれませんが、住所の問題がややこしいのは日本だけの問題ではなくて、むしろ日本はうまく整備されている方なんですね。

海外旅行に行くと、住所自体が存在しないとか、日本では考えられないような事例はたくさんあります。例えばネパールのポカラという街にはフェワ湖という美しい湖があるのですが、この湖に面した施設の住所はすべて「レイクサイド」と表記されます。

ネパールのフェワ湖

そこそこ広い湖なのに、どの家や店の住所も同じ「レイクサイド」なので、一体どうやって郵便物を届けているのかわかりません。ちなみに4年前くらいにポカラを訪れたときには、そのエリアでAmazonの通販は提供されていませんでした。このような地域では住所による本人確認が成立しないため、ローンの利息なども極端に利子が高くなってしまうケースもあるそうです。

なお、住所の特定が難しいのは開発途上国だけでなく、先進国においてもロンドンやニューヨークのマンハッタンなどの都市部で同じような話を聞いたことがあります。

「日本の住所の問題」は結局のところ“地域愛”に帰結

一方、日本では人が住所を見て処理する部分と、機械判読で処理する間をうまくやれているソリューションがうまくいっていて、「住所が理由で郵便や宅配便が届かない」という話を聞くことはほとんどありません。住所には「人間が住所を見て荷物を届ける」という役割と、「機械が住所を読み取って、どの場所にあるのかを判別する」という2つの役割がありますが、日本の住所システムは、その間のバランスをうまく保って両立させている良いソリューションだと思います。

住所というものが、もし「機械が判別できさえすればそれでいい」というものであるならば、緯度・経度・高さで表記すればいいだけの話ですが、たとえば北海道では“条丁目”になっていたり、京都の住所に通り名が入っているものがあったりと、実際には住所の表記ルールは地域によって異なります。なぜそうなっているかといえば、住所は人間が使うものであり、地域ごとの歴史や多様性を重んじているからだと思います。

先日開催された「日本の住所」に関するオンラインイベントも後から動画を拝見したのですが、イベントで話された住所の歴史や、参加者の住所に対する思いを聞いて、改めて住所の問題というのは“地域愛”に帰結するのだなと感じましたし、そうした地域の多様性というものがきちんと担保されているというのはとても大切なことだと思います。

URL

うわっ…日本の住所表記、ヤバすぎ…?解決策をダラダラ語る会 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XF1wvbWF0Q8

日本の住所の課題を識者が語る「うわっ…日本の住所表記、ヤバすぎ?解決策をダラダラ語る会」イベントレポート
https://graphia.jp/article/2023/06/28/977/

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