月刊Graphia 2025年10月号(2025年9月分まとめ)
地図と位置情報を中心としたニュースサイト「GeoNews」の協力を受けて、2025年9月に掲載したニュースの中から厳選した5つの話題をピックアップして紹介します。
MetComとブログウォッチャー、気圧情報をもとに位置情報ビッグデータから高さ情報を抽出する技術を実用化

MetCom株式会社と株式会社ブログウォッチャーは9月16日、両社が連携して提供する「三次元位置情報ビッグデータ」を活用して、都市の情報の中から任意の「高さ」に属するデータだけを抽出できる「高さ情報による階層分離」技術を実用化したと発表しました。
三次元位置情報ビッグデータは、ブログウォッチャーの位置情報プラットフォーム「プロファイルパスポートSDK」がスマートフォンから取得する気圧情報を、MetComの垂直測位サービス「Pinnacle」で⾼さ情報に変換することで作成されます。Pinnacleは都市の各所に気圧情報を取得する基準点を設置し、スマートフォン内蔵の気圧センサーの情報と比較分析してリアルタイムに高さ情報を提供するサービスで、MetComが保有する気圧計ネットワークのエリア内であれば建物内に特別な測定機器やビーコンなどを設置することなく垂直測位が可能となります。
今回実用化したのは、三次元位置情報ビッグデータに含まれる高さ情報を活用して、地下通路やペデストリアンデッキ、駅ビルの特定フロアなど、任意の高さに属する人流データを直接抽出できる技術で、従来は「ペデストリアンデッキ利用者は全体の○割程度」といった統計と全体データをかけ合わせて推計する手法が一般的でしたが、同技術を利用することにより推計作業の手間を省略し、客観的で信頼性の高いデータを取得可能となります。さらに、抽出後のデータは既存の二次元位置情報の分析ノウハウやツールをそのまま活用できます。
MetComは同日、株式会社ホロラボとKPMGコンサルティング株式会社とともに国土交通省の「令和7年度三次元人流データを活用した課題解決等実証業務」に参画することも発表しました。この業務は三次元位置情報ビッグデータをもとに生成される三次元人流データの利活用促進に向けた実証で、池袋および大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)、八王子の3エリアにおいて三次元人流データの活用方法の調査・検討や地域課題解決手法の実証を実施します。
TomTom、カーナビアプリケーション「Automotive Navigation Application」を提供開始

TomTomは9月8日、新たなカーナビゲーションアプリケーション「Automotive Navigation Application」を発表しました。
同アプリケーションは、同社の地図プラットフォーム「TomTom Orbis Maps」を活用したナビゲーションシステムを開発できるアプリケーションで、自動車メーカーは同アプリケーションを利用することにより、時間やコストをかけずに独自の地図やテーマを作成してカーナビゲーションシステムを開発できます。地図データは継続的な更新が可能で、ドライバーは常に最新のルート情報を入手できます。
同社の製品エンジニアリング担当シニア・バイス・プレジデント(SVP)を務めるManuela Locarno Ajayi氏によると、同製品により開発期間が数カ月から数週間へ短縮した実証例もあるそうです。
TomTom Orbis Mapsの3Dマップや、EV向けに最適化されたナビゲーションサービスも提供可能で、例えば車両のバッテリー情報と連携することにより、充電スタンドの情報をタイムリーに提案することも可能となります。ドライバーは自身のサブスクリプションや好みに合った充電スタンドを見つけることが可能となり、航続距離の不安が解消されます。
ジオテクノロジーズとGoogleが資本業務提携、開発協業を開始

ジオテクノロジーズ株式会社とGoogleは9月17日、資本業務提携に合意して開発協業を開始すると発表しました。
両社はこの協業において、それぞれの技術と専門知識を組み合わせることにより、日本市場における地図情報インフラの高度化やAIを活用した地図データベース開発の効率化、自動運転・安全運転分野のソリューション強化などさまざまな分野で技術革新を目指すとしています。
両社の関係は、約10年前にジオテクノロジーズの地理空間データ活用に関する検討から始まりました。ジオテクノロジーズは今回の業務提携により、地理空間データの提供という枠組みを超えて戦略的パートナーシップへと関係を強化することで、研究開発体制を強化するとともに人材採用を拡大し、新たなサービスの市場投入を促進させる方針です。
「Yahoo!天気・災害」、災害マップで大規模災害時に被災地の航空写真を掲載

LINEヤフー株式会社が提供する「Yahoo!天気・災害」は9月26日、ユーザーからの被害情報を確認できる機能「災害マップ」において災害時に航空写真を掲載する取り組みを開始しました。ウェブ版の「Yahoo!天気・災害」に加えて、「Yahoo!防災速報」アプリでも提供します。
「災害マップ」は、災害の危険が迫っているときや災害時においてユーザー同士で状況を投稿して共有できる機能で、ユーザーは「Yahoo!防災速報」アプリから投稿を行えます。投稿されたリアルタイムの災害状況は同アプリおよび「Yahoo!天気・災害」で閲覧できます。
今回の取り組みでは、航空測量会社の国際航業株式会社およびアジア航測株式会社と連携し、両社が大規模災害発生時に撮影・提供する航空写真を「災害マップ」に掲載します。
撮影対象を斜め方向から捉えた航空写真は、真上から撮影したものに比べて建物の高さや地形の凹凸、構造物の損壊状況をより視覚的に理解できます。また、衛星写真よりも撮影高度が低く解像度が高いため、浸水範囲や土砂崩れ、延焼範囲などの被害状況を詳細に確認しやすく、地図と重ね合わせて俯瞰的に閲覧することにより、現地の状況を広域的に把握することも可能となります。
「災害マップ」上で航空写真とユーザー投稿を組み合わせて展開することにより、現地の状況を全国のユーザーへ届けるとともに、避難行動や支援活動をサポートすることを目的としています。
ガーミンジャパン、ハンディGPSの最上位モデル2製品を発売

ガーミンジャパン株式会社は、ハンディGPSの最上位モデル「GPSMAP H1」と「GPSMAP H1i Plus」を9月18日に発売すると発表しました。
両製品は3.5インチの半透過カラーTFTディスプレイを搭載したハンディGPSです。2周波数帯(L1信号・L5信号)を受信可能で、ABCセンサー(3軸電子コンパスと気圧高度計)を搭載し、マップデータも内蔵します。従来モデルよりも操作性が向上し、物理ボタンとタッチスクリーンによるダブルインターフェイスとなり、ボタン操作とタッチ操作の両方が可能となりました。地図操作についてはタッチパネルでのピンチズームにも対応しています。
バッテリー持続時間は約145時間です。「日本詳細地形図2500/25000」を標準搭載し、国土地理院のデジタルデータをもとに2万5千分1地形図に近い地図を表示します。また、海外大陸地図であるTopoActiveが無料でダウンロード可能で、海外登山時に活用できます。ボディは米国防総省のMIL規格(MIL-STD-810)に準拠しており、LEDフラッシュライトも内蔵します。
GPSMAP H1i Plusは衛星通信機能を搭載し、イリジウムネットワークを経由した双方向通信が可能です。マイクとスピーカーも搭載し、音声でのメッセージ送受信も行えます。音声送信は最大30秒まで送信できます。緊急時にはボタンを押すだけでGarmin応答センターへSOSを発信することが可能です。さらに、LiveTrack機能を使ってデバイス位置情報を発信し、家族や友人に自分の居場所や安全を伝えることもできます。