【ジオ用語解説】ドローン

遠隔操作によって飛行する無人の航空機

ドローンとは、もともと遠隔操作によって飛行する無人の航空機のことを意味しますが、現在は航空機だけでなく船舶や車両などもドローンと呼ばれることがあり、「地上ドローン」「水上ドローン」「水中ドローン」などという言葉もあります。

ラジコンとの違いはフライトコントローラーの有無

遠隔で操作する無人機というと「模型屋で買えるラジコンとどう違うの?」と思う人もいるかもしれませんが、ドローンには「フライトコントローラー」という制御装置が搭載されている点がラジコンと異なります。フライトコントローラーとは、ドローンに搭載されたジャイロセンサーやGNSS(衛星測位システム)受信機からの情報、さらに送信機からの命令を統合して機体の姿勢や速度、飛行位置などを自律的に制御する装置です。

たとえばマルチコプター(回転翼機)には、4つのプロペラを持つクアッドコプターや6つのプロペラを持つヘキサコプター、8つのプロペラを持つオクトコプターなど様々な機体があり、それぞれのプロペラの回転数などを変えることで姿勢や速度などが変わります。でも、複数のプロペラの回転数を同時に調整するのを人間が手動で行うのはとても難しいです。

マルチコプター

フライトコントローラーは、ドローンの前進/後進や上昇/下降、旋回といった様々な動作を実現するために、各プロペラの適正なモーターの回転数を判断してESC(スピードコントローラー)に信号を送ります。これにより、ドローンをその時々の動きに適した速度や姿勢に制御することができます。

フライトコンローラーのないラジコン飛行機やラジコンヘリコプターは操縦が難しく、自在に飛ばせるようになるまでには訓練に多くの時間を費やさなければなりませんでした。墜落させてしまったときのダメージも大きくコストもかかるため、これでは誰もが気軽に手を出せるものとは言えません。

ところがフライトコントローラーを搭載したドローンの登場により、飛行させることの難易度は以前に比べて大きく下がり、誰でも短時間のトレーニングで簡単に無人航空機を飛ばせるようになったのです。しかも操縦できるだけでなく、あらかじめ飛行経路を指定することで、操作を行わず自動的に経路に沿って飛行させることも可能となりました。安全性も高く、電波が届かなくなった場合は自動的に離陸地点に戻る機能なども搭載されています。

ドローンというと多くのプロペラを搭載したマルチコプターを思い浮かべる人が多いと思いますが、近年では飛行機のような形をした「固定翼ドローン」と呼ばれる機体も普及しつつあります。固定翼ドローンはマルチコプターに比べて高速かつ長距離の飛行が可能で、搭載できる荷物の重量も多くバッテリーの持続時間が長いというメリットがありますが、離着陸に広いスペースが必要で小回りが利かず、ホバリングで空中に留まることができないというデメリットもあります。

なお、マルチコプターのように垂直離着陸が可能で、かつ固定翼機のように高速で長距離を移動できる「VTOLドローン」もあります。

様々な用途に活用されるドローン

こうして私たちの身近な存在となったドローンは、様々なビジネスにおいて活用されるようになっています。軍事分野を除いたドローンの主な用途についてご紹介しましょう。

(1)撮影

光学カメラによる空撮はドローンの最も一般的な使い方といえます。テレビ番組ではニュースやスポーツ中継、紀行番組などで多く使われており、観光案内の動画にもドローンは多用されています。スポーツ中継では、マリンスポーツやウインタースポーツ、モータースポーツなど従来では撮影が難しかった位置からのリアルタイム中継が可能となり、視聴者に新たな感動を与えています。

(2)配送

配送の担い手不足を背景に大きく注目されているのがドローンによる配送サービスです。欧米では一部ですでにサービスが実用化されている地域もあり、日本でも山間部や離島などを中心として、配達にドローンを活用する実験などが行われています。航続距離の短さや配達できる荷物の重量制限、悪天候時は運航できないといった課題もありますが、機体の進化や法令の整備などが進むことにより将来的に発展が期待されています。

(3)保守・点検

道路や橋梁、ビル、工場、水道、ダム、鉄塔、発電所など様々なインフラの点検にドローンを活用する取り組みが進んでいます。航空機だけでなく、対象物に磁着しながら点検を行うタイプや、ボート型など様々なシチュエーションに対応した点検用の機体が開発されています。

(4)測量

ドローンを使った測量では、精度を上げるために地上に目印となる対空標識を設置した上で空撮を行い、PCを使って解析を行います。なお、RTK(リアルタイムキネマティック)方式という高精度測位に対応した受信機を搭載したドローンを使うことにより、対空標識の設置が不要で高精度な測量を行えます。近年では様々な角度から撮影した写真を解析することで3次元映像を作成したり、光学カメラではなくLiDAR(レーザースキャナー)を搭載したドローンにより点群データを取得したりすることも可能となっています。

(5)災害対策

災害時にドローンを使うことで、被害状況の確認や情報収集、地図作製などに役立てたり、逃げ遅れた被災者の発見に役立てたり、支援物資を届けたりすることが可能となります。また、災害時に避難を呼びかけるためのスピーカーを搭載したドローンや、被災地で一時的に携帯電話サービスを提供できるようにするための小型中継局を搭載したドローンなどもあります。

国土地理院では「ランドバード」というドローン専門技術部隊を編成しており、地震や豪雨の際に動画などを撮影して公開しています。また、NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパンは災害時に被災地の空撮画像を撮影して迅速に地図化する「ドローンバード」という取り組みを行っています。

国土地理院の「ランドバード」のスタッフによる空撮デモンストレーション

(6)農作業

ドローンを使って農薬散布や肥料散布などの作業を行う取り組みが進んでいます。また、ドローンに様々なセンサーを搭載し、作物の生育状況などを把握するなど、スマート農業や遠隔農業の実現に向けてドローンの活用が期待されています。

ドローンの操縦ライセンス制度がスタート

ドローンの操縦者が増え、多様な分野でドローン関連ビジネスが増えつつある中で、様々な規制も設けられるようになりました。2022年12月には操縦者の国家資格が設けられ、機体の登録が義務化されるとともに、規制対象となるドローンの重量も200gから100gへ引き下げられました。

新たに設けられたドローンの操縦ライセンス制度では、講習を受けて試験に合格することで「一等無人航空機操縦士」または「二等無人航空機操縦士」の資格を得られます。資格を持たなくてもドローンを飛ばすことは可能ですが、飛行に伴う申請を行う際に有資格者の場合は審査が簡略化されます。また、有資格者は有人地帯での目視外飛行や夜間飛行、危険物輸送などリスクの高い飛行も可能となるなど、様々なメリットがあります。

これらの法改正は、物流業界などにおいてドローンの活用を推進するために、有人地帯での目視外飛行を可能にするための措置と言えます。ドローンに関する法整備は現在も進められており、今後も技術革新やドローン関連ビジネスの普及などにあわせて変化していくことでしょう。趣味でドローンを飛ばしている人や、ドローンを使ったビジネスを検討している人などは、常に最新の規制を確認して、違反してしまうことのないように注意する必要があります。

URL

航空安全:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール – 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html

国土地理院ランドバードの発足について|積算資料アーカイブ|建設資材ポータルサイト けんせつPlaza
http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/13187

災害ドローン救援隊 DRONEBIRD|クライシス・マッパーズ・ジャパン
https://dronebird.org/

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