【ジオ用語解説】道路ネットワーク

地図には表示されない道路のための位置情報

地図データは、建物の形を描いた「家形」や、「道路形状」、「POI(地点情報)」など様々なデータで構成されており、その中のひとつとして、地図上には表示されない「道路ネットワーク」と呼ばれるデータがあります。

ノードとリンクの2つの要素で構成

道路ネットワークとは、道路と道路がどのようにつながっているかを表すベクトル形式のデータで、カーナビでルート検索を行う上では欠かせないデータです。道路ネットワークのデータは、交差点や分岐点など道路と道路をつなぐ地点を意味する「点(ノード)」と、ノードとノードをつなげるための「線(リンク)」の2つの要素で構成されています。

ノードは緯度・経度の位置情報で表され、リンクは起点と終点のノードの位置情報およびその間を結ぶ道路の形状を表す点の集合で表されます。なお、地図上では1本の道路で表示されるにもかかわらず、車線の数によっては道路ネットワークを見ると上下線でリンクが分かれている場合もあります。

ちなみにカーナビには、GPSで取得した位置情報の誤差を地図上の道路の位置に合わせて補正する「マップマッチング」という機能が搭載されており、この補正は道路ネットワークデータをもとに行われます。

ノードとリンクにはそれぞれ属性情報が付与されています。属性情報の内容は、車線数や幅員、制限速度、道路名称、道路管理者、道路番号、交通規制など様々です。カーナビでルート検索を行う場合は、ノードとリンクの位置情報だけでなく、一方通行や右左折禁止などの規制を考慮することで、道路の実状に即した経路が導き出されます。

また、幅員の違いによる通行可能な車種の制限や、高架下やトンネルの高さ制限などの属性情報をもとに、一般車とは異なる大型車向けのルート検索を行えるカーナビも存在します。

最近では車の運転中、一時停止や合流地点にさしかかる場合に、事前に音声で注意を喚起する機能を持つカーナビも増えています。このような注意喚起が必要な地点の情報も道路ネットワークデータをもとにしています。

ノードとリンク

属性情報をもとに様々な用途に応じたルート検索が可能に

自動車向けだけでなく、自転車や歩行者向けのネットワークデータもあります。自転車用のナビアプリであれば自動車向けの一方通行規制には関係なくルートを設定できるし、自動車が通行禁止のサイクリングロードや河川敷の道、自動車が走りにくい狭い道なども含めてルートを設定できます。歩行者用であれば、歩道橋や地下街、駅構内などを使った経路を調べることができます。

このように道路ネットワークに付与されている属性情報を活用することで、用途や移動手段に応じたルート検索を行うことができます。

また、属性情報を使って、ルート検索の際に優先させる道路の順位を変えている場合もあります。たとえばスマホのカーナビアプリの指示に従って車を運転していたら、いつのまにか住宅地の狭い露地に入り込んでしまい、走りづらくて困ったという経験はありませんか?

このようなときに、幅員の広い幹線道路の重み付けを高くした道路ネットワークを採用するカーナビならば、最短距離だからといって狭い道に入り込んだり、道路の整備状況が悪い道に入り込んでしまったりすることはなく、幹線道路を優先したルートを提示することができます。このように道路ネットワークの内容は、ナビゲーションサービスの使い勝手に大きく影響を及ぼします。

道路ネットワークは、地図会社が定期的に調査用の車両を走らせて、走行中に取得した映像などをもとに作成したり、新規開通道路については道路管理者などから資料を入手して図面をもとにデータを入力したりすることで整備されています。また、カーナビアプリから取得したプローブデータをもとに道路ネットワークを整備する場合もあります。

カーナビ以外にも活用される道路ネットワークデータ

道路ネットワークのデータはカーナビだけでなく、GIS(地理情報システム)を使った商圏分析などにも活用されています。道路ネットワークデータを使うことにより、店舗やショッピングセンターにたどり着くまでの運転時間を算出して商圏を割り出すことが可能となります。単純に直線距離で円を描くよりも、幹線道路や有料道路などを考慮して家からの到達時間をもとに商圏を割り出すことができるため、より精度の高い分析を行えます。

また、道路整備計画を検討する際にも、道路ネットワークを使うことによって、新たな道路が開通したり、スマートインターチェンジなどが整備されたりした場合に既存の交通にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションすることができます。

このように、道路ネットワークデータはナビゲーションやエリアマーケティングなど様々な分析を支える重要なデータといえます。自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)、公共交通のDX、都市のデジタルツインによるシミュレーションなどが普及しつつある現在において、道路ネットワークデータはより一層、高精度かつ迅速な更新が求められています。

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