【ジオ用語解説】プローブデータ

大量に得られた自動車の走行情報を渋滞や災害対策、経済圏分析などに活用

プローブデータとは、大量の自動車から得られる位置情報などの走行情報を集めたデータで、このようなデータを分析することにより、道路状況の把握や災害対策、都市計画、交通安全対策など様々な分野で活用されています。

プローブデータの収集方法

プローブデータは以下のような乗り物や機器によって収集されています。

コネクテッドカー

通信機能を搭載した自動車(コネクテッドカー)より収集する位置情報や速度・ブレーキ情報などをプローブデータとして活用します。

カーナビゲーションシステム(カーナビ)

自動車メーカーやカーナビメーカーが提供するカーナビ専用機が収集した位置情報や車両の動きのデータを、モバイル回線などを経由して送信し、収集したプローブデータをもとにドライバーへ渋滞情報などを提供します。

スマートフォンアプリ

スマートフォン向けのカーナビアプリや地図アプリなどが収集した位置情報を匿名化して収集し、自動車で移動しているものと推測されるデータを抽出してプローブデータとして活用します。収集されたデータをもとに渋滞情報なども提供します。

ドライブレコーダー

通信機能を搭載したドライブレコーダーを使って位置情報を収集します。タクシーやトラックでは車両の運行管理や安全運転対策などにも活用されます。

デジタルタコグラフ(デジタコ)

デジタルタコグラフとはトラックなどへの装着が義務付けられている車載機器で、運転時の速度や走行時間、走行距離、位置情報などを記録し、これらのデータを商用車のプローブデータとして活用します。

衝突防止警報補助装置

衝突防止警報補助装置から収集される衝突警報が発生した場所の位置情報をもとにプローブデータとして活用します。

プローブデータの活用法

プローブデータの代表的な活用法としては、以下のような使い方が挙げられます。

渋滞情報

地図アプリやカーナビアプリ、カーナビ専用機では、地図上で渋滞が起きている道路が色分けして表示され、どの道が混み合っているのかがひと目でわかります。このような渋滞情報は、スマートフォンやカーナビより収集するプローブデータや、VICSの情報をもとに表示されるもので、ナビゲーション機能を利用する場合はこの渋滞情報をもとに空いている道路を選んでルートを決めたり、目的地への到達予想時間を算出したりすることができます。

災害時の通行実績情報

地震や水害などの発生時に、自動車会社やカーナビメーカーが通行実績情報を公開し、それらの情報をもとに各道路の通行可否を把握することができます。令和6年能登半島地震が発生した際にも、G空間情報センターやITS Japanによって通行実績情報を可視化した地図が公開されました。

G空間情報センターで公開された通行実績マップ(出典:令和6年能登半島地震

商圏分析

商業施設や観光業者がプローブデータはGIS(地理情報システム)による商圏分析にも活用されています。出店を計画している場所の周辺道路の交通量を調べたり、訪問客がどのエリアから訪れているのかを調べたりと、様々な分析を行うことでマーケティングに活かすことができます。

交通安全対策

プローブデータをもとに渋滞が多発する箇所や急ブレーキが発生する箇所を把握することにより、交通安全に活かすことができます。また、新規道路の開通や、補修工事に伴う道路の通行止めの際に、周辺の交通量にどのような影響を与えるのかを調べることもできます。このほか、プローブデータをもとに交通量を把握し、信号機制御に役立てる取り組みも進められています。

地図製作

プローブデータを分析することにより、地図データに収録されていない道路を抽出し、新規道路の発見に役立てることができます。例えばナビゲーションアプリを提供するナビタイムジャパンでは、プローブデータをもとに新規開通道路を最短で開通日の翌日にサービスに反映できる体制を整えています。

まちづくりやスマートシティにも貢献

プローブデータは現在、自動車メーカーやカーナビメーカー、スマートフォンアプリ事業者、地図会社など様々な事業者によって収集が行われ、多種多様な分野において活用されています。近年では大規模災害時にはプローブデータをもとにした通行実績情報が速やかに公開されるようになってきており、被災地支援に大きく貢献しています。

プローブデータは安心・安全なまちづくりにも役立つ技術で、例えば雪国においてプローブデータをもとに渋滞が発生しやすい区間を特定して優先的に除排雪を行うといった活用法もあります。また、インフラの点検に活用する取り組みも進められており、プローブデータを活用して道路舗装の劣化箇所を絞り込むといった使い方も模索されています。デジタル技術を活用して都市のインフラや施設の運営業務を最適化する“スマートシティ”の実現にも欠かせないものと言えるでしょう。

URL

令和6年能登半島地震
https://www.geospatial.jp/disaster-info/