ジオ用語解説「GTFS」

GTFS(General Transit Feed Specification)とは、世界標準の公共交通データフォーマットで、バスや鉄道、船舶などさまざまな公共交通の時刻情報や経路情報、運賃情報などの情報を定義しています。

もともとはインターネット上で経路検索サービスを提供するために、米国の公共交通事業者とGoogleが共同で策定したデータ形式で、現在は世界各地で標準フォーマットとして利用されています。経路検索アプリやウェブの経路検索サービスでバスや鉄道を使った経路を検索可能とするためには、交通事業者が経路検索サービスの提供事業者に対して時刻表データやルート情報、運賃情報などを提供する必要があります。そのときにデータの受け渡しをするためのフォーマットとしてGTFSが使われています。

交通事業者が経路検索サービスの提供事業者に対して使いやすい標準形式でデータを提供することにより、交通事業者は自社のバスや鉄道を多くの人にPRすることが可能となり、地元の人だけでなく旅行客や外国人への認知度が高まるほか、他の交通手段と組み合わせたシームレスな経路検索が可能となり利便性が向上します。

また、GTFSデータは経路検索サービスに活用されるだけでなく、デジタルサイネージでのバス情報の配信や、紙の時刻表の作成システムなどに活用できるほか、交通渋滞のシミュレーションなど都市計画に活用することもできます。

日本では、2017年に国土交通省によってGTFSと互換性のある「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」がバス情報の標準フォーマットとして策定されました。日本ではバスなどの公共交通が世界に比べて複雑であるため、GTFSと互換性を持たせつつ、日本独自の仕様を追加したフォーマットとなっています。

GTFS-JPは17のCSVファイルで構成され、すべてカンマで区切ったテキストファイルで保存されます。17すべてを満たさなければならないわけではなく、「必須」「条件付き必須」「任意」の項目があります。

このうち必須のファイルは以下の通りです。

  • 事業者情報(agency.txt)
    事業者名称などの基本的な情報
  • 停留所情報(stops.txt)
    停留所の位置(緯度・経度)および停留所名
  • 経路情報(routes.txt)
    路線名など
  • ダイヤ情報(trips.txt/stop_times.txt)
    便ごとの停留所通過時刻
  • 運行区分情報/運行日情報(calendar.txt/calendar_dates.txt)
    平日・土日祝など運行区分に関する情報
  • 運賃情報(fare_attributes.txt/fare_rules.txt)
    運賃に関する情報
  • 提供情報(feed_info.txt)
    データを公開している組織の情報やデータの有効期限など
  • 翻訳情報(translations.txt)
    停留所の読み方や外国語訳など

それぞれの書き方のルールについては、国土交通省が公開している「静的バスフォーマット(GTFS-JP)仕様書」に詳しく記載されています。

GTFS-JPのデータの作成方法としては、Excelなどの表計算ソフトやGTFS作成ツールを使用するほか、運行ダイヤのシステムやバスロケーションシステムから出力する方法もあります。

また、社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が日本バス情報協会の協力のもと、全国のGTFSデータの情報を集約した「GTFSデータリポジトリ」というウェブサイトを開発・運営しており、同サイトでGTFSの登録や公開、検索を行えます。なお、同サイトに登録・公開されたGTFSデータは、「国土交通データプラットフォーム」において地図上で検索・閲覧・データ取得することもできます。

日本バス情報協会が公開している「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)による公共交通オープンデータ一覧」によると、2024年9月現在で全国676の公共交通事業者がGTFS-JPデータを公開しています。

標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)による公共交通オープンデータ一覧

GTFS-JPには、ダイヤ情報や停留所や経路などの地理的情報、運賃などの静的な情報が定義されていますが、それとは別に、バスロケーションシステムなどから得られるバスの位置情報や遅延情報などの動的情報を定義した「GTFSリアルタイム(GTFS-RT)」という形式もあります。

GTFS-RTは静的なGTFS-JPの情報を補完するデータであり、GTFS-RTとGTFS-JPを組み合わせることにより、経路検索サービスなどにおいてバスのリアルタイム位置情報や遅延情報などを提供することが可能となります。