ドローン宅配で注目、3次元空間を立方体で区切る「空間ID」の可能性とは

Geoloniaが現在取り組んでいる「空間ID」は、ドローンを使った宅配などさまざまな分野で期待されている技術です。空間IDがどのような仕組みでどんな可能性があるのか、代表の宮内に話を聞きました。

第1回:ドローン宅配で注目、3次元空間を立方体で区切る「空間ID」の可能性とは
第2回:建設現場やスポーツ、エンタメなど空間IDの活用事例
第3回:経産省が推進する空間IDの共通ライブラリでドローンの自動運行を効率化
第4回:3次元を超えて4次元空間での活用も検討が進む空間ID

ドラクエのようなマスで3次元の空間を区切る「ボクセル」で位置を特定する仕組み

9月の初旬に、長崎で開催された「第2回ドローンサミット」に出展しました。公的機関や民間企業など多くの方にGeoloniaのブースを訪れていただきましたが、ドローンの関係者が多いこともあってか、当社が取り組んでいる「空間ID」に興味を示す方が多数いらっしゃいました。

空間IDとは、3次元空間を「ボクセル」と呼ばれる立方体で区切り、それぞれにIDを付けて位置を特定する仕組みです。

空間IDのイメージ

ドラゴンクエストのようなファミコン時代のロールプレイングゲームを想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。ゲームの世界の地図は1つずつのマスで区切られていて、プレーヤーが操作するキャラクターはそのマスを右にいくつ、下にいくつ、というようにマスの単位で移動していきますが、このマスの動き方を上下左右だけではなく縦方向に、2次元ではなく3次元の空間でボクセルというマス単位で移動するという考え方が空間IDです。

2次元で作られたゲームのマスを3次元空間に適用

緯度・経度・高度の“揺らぎ”を吸収する仕組みとして経済産業省やデジタル庁が策定中

3次元空間の座標なら緯度・経度・高度で表せるのに、一体なぜ空間IDが必要なのでしょうか。

緯度・経度・高度というのは空間上の“点”をピンポイントに指すものなので、特定の場所を示すにはわかりにくいことがあります。例えば「35.1」と「35.11」はとても近い数字なので同じ建物を示している可能性がありますが、数字だけでは違う場所か同じ場所と考えるべきなのは特定できません。小数点以下が1桁か2桁くらいならまだなんとかなるかもしれませんが、下7桁とか8桁とかになってくると、もうわからなくなります。

さらに、場合によってはアプリケーションを通すことで、「本当は35.123だったのに、データとして飛んできたものは35.12になっていた」という風に切り捨てされてしまう場合もあります。実質的にはデータが壊れてしまうわけですね。

この状態でそのままドローンに適用するといろいろな問題が起きます。例えばドローンで家に荷物を運ぶときに緯度・経度を使った場合、緯度・経度がピンポイントで示す場所が家の屋根だったとすると、住所としては正しいけれど荷物が屋根の上に置かれてしまって受け取れない、というケースが起こりえます。データが正確であればあるほど、きちんと届かないという謎の事態が起きてしまうわけですね。

そこで、数字の“揺らぎ”を吸収する仕組みとして“空間ID”が考えられ、現在、経済産業省やデジタル庁などが策定を進めています。

空間IDによる空間の分割方法

ボクセルのサイズを変えることでさまざまな用途に応じて3次元空間での位置特定を実現

空間IDでは、ボクセルの分解能を1mにしたり、8mにしたりと格子の大きさを変えることで、様々な用途に応じて3次元空間上における位置特定を行えます。ドローン宅配の例では、ドローンが飛行する場所に該当するボクセルの中に、建物の屋根や庭のドローンポートなどの情報を小さいサイズのボクセルで保存することで、建物の情報をまとめて取得することが可能となり、荷物を届ける際の利便性が向上する、というわけです。

Geolonia代表の宮内隆行

空間IDの策定にあたっては、実は国土地理院のベクトルタイルに付けられているタイル番号に高さの情報を加えたものが使われています。こうすることで、国土地理院のベクトルタイルや、それに準じたベクトルタイルをそのままデータソースとして使うことが可能となります。

なぜ国土地理院のベクトルタイルのタイル番号をもとにしたかというと、新たなIDを作る際に、そのIDに紐付けられたデータがどれくらいあるかというのはとても重要だからです。例えばSNSのようなサービスは、新たに開発するのは意外と簡単ですが、ユーザーが1人しかいなかったら誰もそれを利用する意味がありません。やはり、ある程度の数のユーザーが集まるからこそ価値のあるサービスになるわけです。IDのようなソリューションもそれと同じで、紐付けされたデータがたくさんあるからこそ、そのIDに価値が生まれるのです。

同じような仕組みとして海外ではwhat3wordsとかGoogleのplus codeなどもありますが、いずれもそのIDをキーにデータを引き出せるインフラを再発明する必要があるため、日本では国土地理院のベクトルタイルに直接アクセスできるような仕組みで策定が進められています。今後、日本発の空間IDをグローバルスタンダードに育てていこうという構想もあるので期待したいですね。

URL

3次元空間情報基盤アーキテクチャの検討 報告書(PDF)
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/9f4e70e2-2335-4181-8293-258c12549d31/df4f46e8/20220927_policies_mobility_report_03.pdf

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