3次元を超えて4次元空間での活用も検討が進む空間ID

Geoloniaが現在取り組んでいる「空間ID」についてGeolonia代表の宮内が語る第4回は、空間IDを活用した四次元時空間の検討や、空間ID普及に向けた今後の課題について語ります。

第1回:ドローン宅配で注目、3次元空間を立方体で区切る「空間ID」の可能性とは
第2回:建設現場やスポーツ、エンタメなど空間IDの活用事例
第3回:経産省が推進する空間IDの共通ライブラリでドローンの自動運行を効率化
第4回:3次元を超えて4次元空間での活用も検討が進む空間ID

空間IDは3次元を超えて「4次元時空間の情報基盤」に向けて検討中

経済産業省によって進められている空間IDの検討会は、発足当初は「3次元空間情報基盤アーキテクチャ検討会」となっていましたが、2023年8月に開催した第7回より「4次元時空間情報基盤アーキテクチャ検討会」へと名称が変更されました。

4次元時空間情報基盤アーキテクチャ検討会のWebサイト

この措置は、3次元空間情報に“時間”の概念を付け加える必要性が検討会のメンバーより指摘されたことによるものです。時間情報を付加することで、例えば人流データの場合、時系列ごとの人流が秒/分単位で扱えるようになり、「このイベントを行っているときに人流が増えた」とか、「この音楽がかかっているときに人流が減った」といった細かいことまで分析できるようになります。

近年、人流データによる分析サービスが増えてきましたが、人間による分析では「このショッピングセンターは周囲の他の店に比べて訪れる客が多い」といった目視でもある程度は予想できる結果となることが多く、予想を超えた結果というのはなかなか得られないものです。しかし、空間情報を時間ごとに細かく扱えるようにすることで、例えばショッピングセンターの人流分析で、「このイベントを行っているときに限って人がものすごく増えた」とか、「この音楽がかかっているときはこの売り場で人の数が増える傾向がある」とか、人間では分析不可能な新たな発見があるかもしれません。

3次元情報のオープン化で空間IDのエコシステム構築が重要

このほかの空間IDの課題としては、よく指摘されるのがデータ不足の問題です。例えば「ドローンポートをどこに設置するか意志決定するために空間IDは役立つ」という意見はよく聞かれるのですが、では実際にそれをやろうとした場合に、必要となるデータを集めようとすると足りないケースがかなり多いです。

Geolonia代表の宮内隆行

この問題はかなり重要ですが、一方で、これまでは「オープンデータをもっと整備してほしい」といった漠然とした要望しかなかったのに対して、最近は「用途地域のポリゴンが欲しい」という風に具体的な要望を耳にする機会が多くなっており、かなり状況が変わってきていると思います。今後は色々な企業や公的機関が3次元情報をどんどんオープンに公開していただけると、もっとやりやすくなると思います。技術開発を行える土壌をいかに整えて大きなエコシステムを作っていくかがポイントとなります。

空間IDというのは大きな可能性を持っていて、物流や土木建設、スポーツやエンタメのほかにも様々な用途があります。例えば防災の分野では、「今から200ミリの雨が3時間降った場合に災害リスクが高くなる場所を表示する」など、動的なハザードマップを作ることも可能ではないかと考えています。数値データをエビデンスとして解像度の高いハザードマップを実現することで、例えばAIが避難が必要かどうかを判断し、要救助者のところへ自動的に迎えに行くとか、そのような世界がいずれ実現するかもしれません。

このように様々な可能性を持つ空間IDに、今後ぜひご期待ください。

URL

4次元時空間情報基盤アーキテクチャ検討会 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/project/autonomousmobilerobot/conferences/3dspatial/index.html

関連記事RELATED ARTICLE