経産省が推進する空間IDの共通ライブラリでドローンの自動運行を効率化

Geoloniaが現在取り組んでいる「空間ID」についてGeolonia代表の宮内が語る第3回は、経済産業省が推進する、空間IDを扱う共通ライブラリや、このライブラリを活用したドローンの事例について語ります。

第1回:ドローン宅配で注目、3次元空間を立方体で区切る「空間ID」の可能性とは
第2回:建設現場やスポーツ、エンタメなど空間IDの活用事例
第3回:経産省が推進する空間IDの共通ライブラリでドローンの自動運行を効率化
第4回:3次元を超えて4次元空間での活用も検討が進む空間ID

経済産業省が推進する「Ouranos Ecosystem」内の4次元時空間情報基盤の共通ライブラリを開発

Geoloniaは経済産業省が推進する「Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)」内の4次元時空間情報基盤に関する検討会で仕様の策定に協力しており、空間IDを扱うための共通ライブラリ「Ouranos GEX」の開発も担当しています。Ouranos GEXは2023年7月に公開しました。Python版とJavaScript版があり、Geloniaが開発を担当したのはJavaScript版です。

Ouranos Ecosystem(出典: 経済産業省Webサイト

「ウラノスGEX 4次元時空間情報基盤用共通ライブラリ」は任意の座標を空間IDに変換するためのライブラリで、任意の空間オブジェクトを入力すると、現在のボクセルの「ひとつ上」とか「ひとつ右」というように相対的な位置を返すことが可能です。実際のデータとしては空間IDの絶対位置で取得しますが、UXとしては相対的な位置が示されるため、簡単に指示することができます。

このライブラリがどのように役立つかというと、例えばドローンがお互いに向かい合って飛行して近付きつつある場合に、どのような状態を“ニアミス”と捉えるかは3次元空間ではとても判断が難しいため、お互いにどのボクセルへ移動する予定なのかを瞬時に共有し合うことができれば衝突のリスクを下げることができます。

これは前回紹介した“空間予約”と同じ考え方です。例えば現実に飛んでいる飛行機に空間IDを割り当てたアプリケーションを以前作ったことがありますが、空間IDを使うと動作が非常に軽くなります。

このアプリケーションでは、飛行機をクリックすると、その場所の空間IDがわかるようになっており、あるズームレベルでは別々の空間IDを持つ飛行機が、分解能を下げると同じ空間IDになります。これにより、飛行速度など様々な条件に応じて分解能を調節した上でリスクの有無を判断できます。

短時間の地形断面図を作成してドローン自動運行に活用

このほかに、空間IDを使うことで処理が軽くなった例としては、地図上で複数のウェイポイントを指定し、そのルートの標高を表した地形断面図を表示する機能が挙げられます。

Geolonia代表の宮内隆行

ドローンというのは、離陸地点からの相対的な標高をもとに飛行するので、平野部で離陸してから山岳地に入った場合、地表面からの高度は相対的に下がり、地面が近くなってしまいます。従来はその辺の調整は人間が行っていたのですが、ドローンを自動運行させる場合は地形を把握させる必要があり、そのために作ったのが空間IDをもとにした地形断面図の作成機能です。

このような地形断面図の作成は、長距離の断面図を作る場合は処理が重くなり、従来は長い時間がかかってしまっていました。空間IDであれば分解能を変更することが可能なので、分解能を落として各ボクセルの最大標高だけを使うといった処理を行うことでデータのやりとりを減らすことが可能となり、短時間で地形断面図を作れるようになります。

ドローンビジネスの関係者の方にこのデモを見せたら、長い距離でも瞬時に地形断面図を作成できることにとても驚かれていました。瞬時に作成できるということは、飛行中でもリアルタイムに標高を計算し、それを加味した飛行が可能になるということで、ドローンの自動運行には大いに役立つと思います。

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