ジオ用語解説「自動運転」

機械が人間の代わりに自動車の速度制御や制動、判断などを行うシステム

自動運転とは、自家用車やトラック、バスなどの運転手が行っている速度制御や操舵、制動、認知・判断などを機械やシステムが代わって自動的に行うものを意味します。

自動運転のイメージ

自動運転が実現されることにより、以下のような効果が期待できます。

  • 安全性向上による交通事故の低減
  • 渋滞の解消・緩和
  • トラックやバス、タクシーの運転者不足の解消
  • 物流の効率化
  • 自動車産業の競争力確保
  • 渋滞緩和や燃費向上、不要な加減速の低減によるCO2排出量削減
  • 高齢者の移動支援
  • 災害時における緊急対応

自動運転に必要な技術としては、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 自車の現在地を把握するための位置特定技術
  • 障害物や歩行者を検知するためのセンサー技術
  • 地図や道路ネットワーク情報に基づいて走行ルートを決める技術
  • この先に起こりうる事故のリスクを算出する予測技術
  • 運転制御を判断するAI技術
  • 路車間や車車間で情報を共有するための通信技術
  • ドライバーの状況を監視するモニタリング技術

位置特定技術としてはGPSやみちびきなどのGNSS(全地球航法衛星システム)が知られていますが、GNSSだけではトンネル内など衛星電波の届かないエリアでは測位できないため、加速度やジャイロセンサー、車速センサーなどを組み合わせて精度向上が図られています。また、高精度三次元地図(HDマップ)やLiDAR(レーザースキャナー)を活用をした位置推定の技術も進んでいるほか、自車位置の推定とHDマップの作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術も注目されています。

このような自車位置の特定技術と、LiDARやミリ波レーダー、カメラなどの各種センサー、通信によって得られる情報や、道路上の白線や路側帯、ガードレール、信号、障害物など車両周辺に関する地理空間情報を組み合わせた上で、AIなどを活用することにより運転操作を自動的に行います。

自動運転は6段階でレベル分け。国内ではレベル4の公道走行が認可

国土交通省によると、自動運転の技術は、運転する主体や走行領域によって0~5の6段階のレベルに分けられており、それぞれ以下のように定義付けしています。

  • レベル0:運転自動化なし(人がすべての操作を行う)
  • レベル1:運転支援(ハンドル操作または速度制御のいずれかをシステムが支援する)
  • レベル2:部分運転自動化(ハンドル操作と速度制御の両方をシステムが支援する)
  • レベル3:条件付運転自動化(特定の条件下では自動運転を行えるが状況に応じて人が操作する)
  • レベル4:高度運転自動化(特定の条件下では自動運転が可能で人による操作は不要)
  • レベル5:完全運転自動化(すべての地域で完全な自動運転を行える)
自動運転のレベル分け(出典:国土交通省)

現在、一般的に採用されることが多くなったADAS(先進運転支援システム)はレベル2に相当し、前方車両に追従してハンドル操作や速度制御をシステムがサポートしますが、レベル2までは運転の主体はあくまでもドライバーです。一方、レベル3以上はシステムが運転主体となります。

日本では、2023年4月に改正道路交通法が施行され、特定の条件で自動運転が可能となるレベル4の自動車の公道走行が認められました。経済産業省と国土交通省との連携で取り組んでいる「RoAD to the L4」プロジェクト(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト)では、2025年度までに多様なエリアや多様な車両に自動運転を拡大する予定としています。

さらに、自動運転の実現にともなって、地域の社会課題の解決や地域活性化に向けてIoTやAIを活用した新たなモビリティサービスを社会実装するとともに、先進モビリティサービスに関連した人材の確保・育成、普及啓発活動にも取り組んでいます。

日本においてレベル4の自動運転の初認可を受けた事例としては、福井県永平寺町で実施された移動サービス「ZEN drive」が2023年3月に認可を受けました。同サービスは、電動カートをベースに各種センサーが搭載され、電磁誘導線とRFIDによる走行経路を走行するもので、2023年5月にサービスが開始されています。

最近では、羽田空港近くの公道でもレベル4の運行について許可されるなど、今後はほかの地域でもレベル4による無人の自動運転が採用されることが予想され、自動運転の社会実装が進むことが期待されます。また、自動運転の技術を活用したトラックの隊列走行や、自動バレーパーキング(店舗の入口でドライバーが降車して、その後車両が無人で走行して空いているスペースに自動で駐車する自動駐車機能)などの実現に向けても研究・開発が進められています。

関連URL

RoAD to the L4プロジェクト
https://www.road-to-the-l4.go.jp/

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