【ジオ用語解説】空間ID

3次元空間を格子単位である“ボクセル”データで管理する仕組み

Geolonia代表の宮内が空間IDについて語ったコラムもぜひご覧ください。

第1回:ドローン宅配で注目、3次元空間を立方体で区切る「空間ID」の可能性とは
第2回:建設現場やスポーツ、エンタメなど空間IDの活用事例
第3回:経産省が推進する空間IDの共通ライブラリでドローンの自動運行を効率化
第4回:3次元を超えて4次元空間での活用も検討が進む空間ID

空間IDとは、3次元空間において地理空間情報を一意に特定するための仕組みのことで、デジタル庁の依頼に基づいてデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)および経済産業省が検討を行っています。

2次元を構成するピクセルに、高さ情報を加えた3次元空間の格子単位である“ボクセル”によって3次元空間を表現し、そこに付与された識別子(ID)と紐付けて参照できるようにすることで、3次元空間情報の基盤として活用できるようにすることを目指しています。

空間IDによる空間の分割方法
空間IDによる空間の分割方法

サイバー空間とフィジカル空間を組み合わせてシミュレーションなどを行う際に、異なる基準に基づいた空間情報であっても、一意に特定可能な空間IDを検索キーとして導入することにより、多様な情報をすばやく結合させたり、検索したりすることが可能となります。

空間IDは建物や地形、樹木、電線などの静的情報を扱う一方で、気象情報のような動的な情報も扱うことを想定しています。たとえばドローンが飛行する際は、ビルや電線などが障害物になるとともに、雨雲も飛行の妨げとなります。そこで、障害物となり得る場所をボクセルで指定することにより、そこの場所を避けて飛行させることができます。

人間が読み取るための空間情報は情報量が多すぎるため、ドローンやロボットなど機械による高速処理は難しく、ボクセルとして単純化することで高速処理を実現できます。

空間IDのイメージ
空間IDのイメージ

空間IDについては現在、デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)および経済産業省が検討会を実施しており、空間の分割方式やIDの形式、ボクセルを配置する高さの基準面など、整備する上での課題について検討するとともに、ユースケースを具体化させて、空間IDを整備することによる費用低減や効率化などのメリットの整理などを行っています。

ボクセルを配置する上での高さの基準面はジオイド面を採用し、多くの地理空間情報が持つ高さ情報(標高)をそのまま紐付けられるようにします。また、空間の分割方式は、地理院タイルと同じ方式でデータの紐付けを行うことが可能で、多くのウェブ地図サービスや地図アプリでデファクトスタンダードとなっている“XYZタイル”を採用する方向で進められています。

空間IDの活用事例としては、以下のようなユースケースが想定されています。

ドローン

鉄塔や建物などの3Dモデルを3次元空間情報に変換して飛行計画の作成に活用するとともに、気象や人流、電波などの情報を統一的な空間に紐付けることで飛行計画作成時の情報検索を効率化できます。また、ドローンが飛行中に、飛行計画時に入手した情報から変化が生じた場合に情報共有を行う際にも、空間IDを使うことで効率的な運行に貢献できます。

ドローンの飛行計画や運行管理に活用
ドローンの飛行計画や運行管理に活用

屋内ナビゲーション

屋内地図データやPOI(地点)情報などの静的情報、人流データなどの動的情報を空間IDに紐付けることにより、自律移動モビリティなどにおいて運行管理システムと連係した屋内ナビゲーションを実現します。また、プラットフォーム上で空間IDに紐付けられたデータは、モビリティだけでなく人向けのナビゲーションにも活用できます。オフィスやショッピングセンター、マンションなどさまざまな施設で、宅配業者やフードデリバリー事業者などの利用が見込めます。

地下埋設物

地下空間と埋設物を空間IDにより管理することで、埋設物の照会漏れを防止するとともに、掘削工事時の事故防止にもつながり、掘削結果の記録も行えます。また、埋設物事業者間で地下空間の状況を共有し、相互活用することも可能となるほか、設備災害対策の面でも利活用が見込めます。

今後、空間IDの実現に向けて検討が必要な事項としては、空間IDへの地物または事象の紐付け方法や、時間情報の扱い方、高さ情報を持たないデータの紐付け方、動態情報の取り扱い方などが挙げられています。

空間IDの検討プロジェクトは、2022年7月までの第1期において検討した成果をもとに、2022年度末までの第2期では、実証事業者と連携して空間データの仕様などの具体化や空間情報基盤の運用方法、普及策の検討を進めるほか、前述した3つのユースケースに加えて歩道走行ロボットやレベル4の自動運転車、海上交通などのユースケースも追加して検討する方針です。また、2023年度以降も仕様および機能の更新・拡張や運用ガイドラインの制定などに引き続き取り組んでいく予定です。

URL

参考資料/画像出典:第4回 3次元空間情報基盤アーキテクチャ検討会 事務局資料
https://www.ipa.go.jp/dadc/architecture/pdf/pj_report_3dspatialinfo_doc-appendix_202207_1.pdf

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